ここ数年、買い物袋の有料化や紙ストローなど、自分達の生活に影響を及ぼしている脱プラ。

「環境への影響を考えると、利便性が落ちるけどしょうがない」

「この程度だったらまだ耐えられる」

このように受け止めている人が多いのではないでしょうか。

今後私たちの生活への影響はますます拡大していくと予想されていますが、まだ先のこと。

私もそのように考えていました。

ですが、欧州での脱プラに対する取り組みを知る機会があり、近い将来日本にも影響するのではと予想。

海洋プラスチックといった問題が発生しているため、欧州のような規制が入る可能性はあります。

プラスチック削減への取り組みが徐々に

だからこそ、プラスチックごみを削減するための取り組みがますます重要視されることでしょう。

そこで今回は日本の企業で実践されている

  • 脱プラ活動
  • 欧州での計画・規制情報

をまとめてみました。

まずは企業の取り組み事例を紹介します。

企業が実践しているプラスチックごみ削減に対する取り組み事例

コスモス薬品

2020年7月にバイオマス配合比率25%未満のレジ袋有料化が法制化されて以来、当社グループ全店ではバイオマス配合比率最大90%のレジ袋に順次切り替えを行っております。

引用元:コスモス薬品

https://www.cosmospc.co.jp/company/co-csr/

九州の定番ドラッグストア「コスモス薬品」では有料化されたレジ袋自体もバイオマス対応に切り替えています。

ちなみに、バイオマスとは動植物や生物の遺骸・排泄物、農産物などとされています。

※生物(bio)の量(mass)のこと

一般的にはジャガイモ、さとうきび、トウモロコシなど再生可能な植物を活用しているケースが多いようです。

イオン九州

イオン九州株式会社(以下 イオン九州)は10月5日(木)より順次、九州内の(沖縄県除く)総合スーパー「イオン」「イオンスタイル」全67店舗の、衣料、日用品・暮らしの品売場で提供している有料プラスチック製レジ袋を、紙製レジ袋に切り替えます※1。

使い捨てプラスチックの使用をさらに削減するため、これまで以上にお客さまにマイバッグ持参等のご協力を呼びかけ、レジ袋辞退率のさらなる向上を目指します。切り替え後に販売する紙製レジ袋は、環境に配慮したFSC認証紙や植物性インキを使用します。

引用元:イオン九州

https://www.aeon-kyushu.info/files/management_news/2635/pdf.pdf

FSC認証とは森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者といった関係者の権利を守り適切に管理・生産された製品であることを照明するためのマークです。

また、イオン九州ではトレーの回収など地道ではありますが、大事な活動を推進し続けています。

こちらのペットボトルキャップのボックスは貯まった量を見える化しているだけではなく、「世界の子供たちにワクチンを届けるため」と記載されております。

積極的に協力したくなるような要素が組み込まれている素晴らしいボックスです。

南日本酪農共同

製品容器の脱プラスチックまたはバイオプラスチックへの変更

引用元:南日本酪農協同株式会社

https://www.dairy-milk.co.jp/ctrl-dairym/wp-content/uploads/2022/03/b978f0b88ca5245f7776491537a15ad3.pdf

ヨーグルッペでお馴染みの「南日本酪農協同株式会社」でも脱プラを推進中です。

例えば、ストローにバイオマスプラスチックを使用している等細かな部分できっちりと脱プラに貢献されています。

株式会社ソラシドエア

2021 年 9 月 1日(水)から地球環境保全に配慮した取り組みの一環として、機内ドリンク提供用として使用していたプラスチックコーティングされた紙コップから “間伐材”を使用した素材へ変更します。また、プラスチック素材を使用していた紙コップ用フタ・ストローも紙製素材へ変更します。

引用元:株式会社ソラシドエア

https://www.solaseedair.jp/corporate/pdf/press210831.pdf

間伐材とは紙の原料となる木・森林の生長に欠かせない手入れ時に発生する材木のことです。

木々は生長するにつれて、枝や幹が太くなり地表に日光が届かなくなります。

その結果、

  • 木々の生育に悪影響を及ぼす
  • 土壌が流出しやすくなり、森林の水源涵養機能が低下する

といった問題が発生する可能性があるため、間伐は重要な作業であり、そこで発生した材木の活用は資源の有効活用といえます。

宮崎県農協果汁株式会社

100%リサイクルペットボトルを使用
2021年からサンAでは、一部商品に100%リサイクルペットボトルを起用しています。100%リサイクルペットボトルとは、リサイクルペット樹脂を100%使用した容器のことです。
この取り組みは、プラスチックごみ対策と、新たに作られるプラスチックの使用量削減に貢献しています。

引用元:宮崎県農協果汁株式会社

https://kajyu.co.jp/eco/

100%リサイクルペットボトルは、大手飲料メーカーでも導入されております。

CO2排出量も50~60%削減するとされており、地球温暖化対策としても有効です。

スーパーマルイチ

12.5調理後食物油の回収・リサイクル、産業系・家庭系両方の紙資源のリサイクルの実施、食品トレー、リサイクルボトル、リサイクル金属の回収と再生への支援、産業用機器類のフルオーバーホール、販売業者を通じた移譲による廃棄抑制・発生防止、PCB廃棄物の適正な管理と処理

引用元:スーパーマルイチ

SDGsのゴールの一つである「つくる責任つかう責任」に対する取り組みとして食品トレーやリサイクルボトルの回収と再生への支援が推進されています。

つくる責任つかう責任の取り組み事例をさらに詳しく知りたい場合はこちらもご覧ください。

欧州の動向

欧州の動向をEUやジェトロの公式サイトの情報を元に紹介します。
※ジェトロについては以下をご覧ください。

ジェトロは貿易・投資促進と開発途上国研究を通じ、日本の経済・社会の更なる発展に貢献することを目指しています。

70カ所を超える海外事務所ならびに本部(東京)、大阪本部、アジア経済研究所および国内事務所をあわせ約50の国内拠点から成る国内外ネットワークをフルに活用し、対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援に機動的かつ効率的に取り組むとともに、調査や研究を通じ我が国企業活動や通商政策に貢献します。

引用元:JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)

他にも様々なニュースサイトをチェックしましたが、今回紹介する2つのサイトで一通りの情報を網羅できております。

ジェトロの情報源

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/60d6edca66cfec17/20220030_01.pdf

EUの情報源
EUのサイトは英語表記ですので、DeepLにて翻訳しております。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_7155

全体像としては以下の計画・戦略を軸にEUの脱プラは推進されています。

※EUやジェトロの原文を読み込んだ上での私たちが重要だと考えた箇所を抜粋しております。

循環型経済行動計画

使い捨てプラスチック製品を削減する等の目標を盛り込んだ計画です。

欧州グリーン・ディール

デカップリングとは切り離すという意味で、環境面においては

エネルギー消費と経済成長の相関を切り離すこと

とされています。

経済成長しつつもエネルギー消費量を減らしていく

というこれまでの経済成長に合わせてエネルギー消費量が増えるという考え方と異なります。

また、包装廃棄物の削減について強く言及されていましたので、そちらの原文もご覧ください。

the Commission is proposing new EU-wide rules on packaging, to tackle this constantly growing source of waste and of consumer frustration. On average, each European generates almost 180 kg of packaging waste per year. Packaging is one of the main users of virgin materials as 40% of plastics and 50% of paper used in the EU is destined for packaging. Without action, the EU would see a further 19% increase in packaging waste by 2030, and for plastic packaging waste even a 46% increase.

引用元:An official website of the European Union

DeepLにて翻訳

欧州委員会は、絶えず増え続ける廃棄物と消費者の不満の原因に対処するため、包装に関するEU全体の新たな規則を提案する。欧州では、1人当たり年平均180kg近くの包装廃棄物が発生している。EUで使用されるプラスチックの40%、紙の50%が包装用であり、包装はバージン原料の主要な使用源のひとつである。対策を講じなければ、EUでは2030年までに包装廃棄物がさらに19%増加し、プラスチック包装廃棄物についてはさらに46%増加すると見られている。

Preventing packaging waste, boosting reuse and refill, and making all packaging recyclable by 2030

引用元:An official website of the European Union

DeepLにて翻訳

包装廃棄物を防止し、再利用と詰め替えを促進し、2030年までにすべての包装をリサイクル可能にする。

The headline target is to reduce packaging waste by 15% by 2040 per Member State per capita, compared to 2018. This would lead to an overall waste reduction in the EU of some 37% compared to a scenario without changing the legislation. It will happen through both reuse and recycling.

引用元:An official website of the European Union

DeepLにて翻訳

主要目標は、2040年までに加盟国1人当たり包装廃棄物を2018年比で15%削減することである。これは、法律を変更しないシナリオと比較して、EU全体で約37%の廃棄物削減につながる。これは、再利用とリサイクルの両方を通じて実現する。

https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_22_7155

新産業戦略

こちらでは、今後の経済成長の軸ともいえるデジタル化の推進と循環型経済の両立について記載されています。

Throughout its long history, industry has proven its ability to lead change. And it must now do the same as Europe embarks on its transition towards climate neutrality and digital leadership in an ever-changing and ever more unpredictable world.

The twin ecological and digital transitions will affect every part of our economy, society and industry. They will require new technologies, with investment and innovation to match. They will create new products, services, markets and business models. They will shape new types of jobs that do not yet exist which need skills that we do not yet have. And they will entail a shift from linear production to a circular economy.

引用元:An official website of the European Union

DeepLにて翻訳

その長い歴史の中で、産業界は変化をリードする能力を証明してきた。そして今、欧州は、変化し続ける予測不可能な世界において、気候変動に対する中立性とデジタル・リーダーシップへの移行に着手している。

エコロジーとデジタルの2つの転換は、経済、社会、産業のあらゆる部分に影響を及ぼす。そのためには、新しいテクノロジーが必要であり、それに見合った投資とイノベーションが必要となる。新たな製品、サービス、市場、ビジネスモデルが生み出される。まだ存在しない新しいタイプの仕事が生まれ、私たちがまだ持っていないスキルが必要とされる。そして、直線的な生産から循環型経済への転換が必要となる。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX:52020DC0102

特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令

EUのサイト情報にて関係している箇所一部を抜粋しております。

This document provides guidance on the interpretation and implementation of Directive (EU) 2019/904 of the European Parliament and of the Council of 5 June 2019 on the reduction of the impact of certain plastic products on the environment (1) (hereafter referred to as ‘the Directive’ or ‘the Single-use plastics Directive’).

The Directive applies to all single-use plastic products listed in its Annex, as well as to all products made from oxo-degradable plastics, and to fishing gear containing plastic. Its Article 12 tasks the Commission to develop guidelines, including examples of what is to be considered a single-use plastic product for the purposes of the Directive. The focus of these guidelines is on the single-use plastic products included in the Annex, listed below.

Balloons;

Balloon sticks;

Beverage containers with a capacity of up to three litres, including their caps and lids;

Beverage containers made of expanded polystyrene, including their caps and lids;

Beverage bottles with a capacity of up to three litres, including their caps and lids;

Beverage stirrers;

Cotton bud sticks;

Cups for beverages;

Cups for beverages made of expanded polystyrene, including their covers and lids;

Cups for beverages, including their covers and lids;

Cutlery (forks, knives, spoons, chopsticks);

Food containers;

Food containers made of expanded polystyrene;

Lightweight plastic carrier bags;

Packets and wrappers;

Plates;

Sanitary towels (pads), tampons and tampon applicators;

Straws;

Tobacco products with filters and filters marketed for use in combination with tobacco products;

Wet wipes.

引用元:An official website of the European Union

DeepLにて翻訳

本書は、特定のプラスチック製品が環境に与える影響の低減に関する2019年6月5日の欧州議会および理事会の指令(EU)2019/904(1)(以下、「本指令」または「単一使用プラスチック指令」)の解釈および実施に関するガイダンスを提供するものである。

同指令は、付属書に記載されているすべての使い捨てプラスチック製品、酸化分解性プラスチックを使用したすべての製品、プラスチックを含む漁具に適用される。その第12条では、指令の目的上、何が使い捨てプラスチック製品とみなされるかの例を含むガイドラインを作成するよう、欧州委員会に命じている。これらのガイドラインの焦点は、以下に挙げる付属書に含まれる使い捨てプラスチック製品である。

風船;バルーンスティック;容量3リットル以下の飲料容器(キャップと蓋を含む);発泡ポリスチレン製の飲料容器(キャップおよび蓋を含む);容量3リットル以下の飲料ボトル(キャップと蓋を含む);飲料用スターラー;綿棒スティック;飲料用カップ;発泡ポリスチレン製の飲料用カップ(カバー及び蓋を含む;飲料用カップ(蓋及びカバーを含む;カトラリー(フォーク、ナイフ、スプーン、箸);食品容器;発泡ポリスチレン製の食品容器;軽量プラスチック製キャリーバッグ;パケットと包装紙;皿;生理用タオル(パッド)、タンポン、タンポン用アプリケーター;ストロー;フィルター付きタバコ製品、およびタバコ製品と組み合わせて使用するために販売されるフィルター;ウェットティッシュ;

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=uriserv%3AOJ.C_.2021.216.01.0001.01.ENG&toc=OJ%3AC%3A2021%3A216%3ATOC

CSRD(欧州グリーンディールの一環)

こちらは日本の企業も影響を受ける可能性がありますので、概要だけでも把握しておくことをオススメします。

CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)とは2023年1月5日に発効されたEUのサステナビリティ開示規制のことです。

これにより、EU加盟国はCSRDに定められた目標を達成するための国内法制化の措置をとる必要がでてきました。【2024年7月6日迄】

日本企業に求められる対応

EU域内にある子会社がCSRDに定める大企業に該当する場合は確認が必要となります。

詳しくは以下ジェトロの記事をご覧ください。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/08/22fd5bdfe711692d.html

調査と処罰の仕組みを設けることが加盟各国に求められており、CSRDを遵守しない企業は投資対象から外される可能性もあります。

コストUPへの対応が求められるが、新たなビジネスチャンスでもある

以前より脱プラ対応は求められておりましたが、

「WANT(した方がよい)」から「MUST(しなければならない)」への移行

がますます進んでいます。

作業や管理工程の追加によりコストが発生することは必須ですので、コストUPと向き合っていかなければなりません。

とはいえ、この変わり目をビジネスチャンスと認識している企業も存在します。

例えば、

  • 環境対応商品の販売
  • 環境対応支援型コンサルティング

など様々なビジネスが生まれています。

だからこそ、脱プラ対応も新たなチャンスと捉えてみることをオススメします。