当社では主に材料を調達し、社内で加工し販売するという形をとっているのですが、ここ最近は加工のみのご依頼が増えてきております。
材料や商品自体はお客様が持ち込まれ、当社内では
- カットのみ
- プリントのみ
実施するというものです。
正直なところ、自ら進んでやりたいとは思えないお仕事でもあります。
なぜかといいますと、失敗した時のリスクが非常に高いからです。
金額面でいいますと、加工する材料や商品の価格が上がるほど、加工を失敗した時の被害額が跳ね上がります。
加工前に何度も試作する工程があるため、実際にお届けする商品での失敗リスクは下がりますが、それでもリスクゼロとはいえません。
さらに素材ごとに特性が異なりますので、それぞれの特性を理解する必要もあります。
例えば自分たちがよく扱っているCNFや木材であれば、形状やプリントするデザインが決まっていたらそのままスムーズに加工開始できます。
\CNFについて知りたい場合はこちらをご覧ください/
つまり自由自在に加工できるわけです。
一方、初めての材料や商品の場合、そうはいきません。
知らないことだらけだからです。
カッティングのご依頼をいただいた場合には、まずレーザー加工することが可能なのか確認する必要があります。
といいますのも、素材によってはレーザー加工時に有害物質が発生することがあるからです。
他にも、素材によっては印刷時の追加工程必要有無も確認します。
つい最近も腕時計への名入れという、これまで経験したことがないご依頼をいただきました。
腕時計自体も初めてですが、素材であるステンレスへの名入れも経験がありません。
「できるのか?」
という若干不安の中でのスタート。
といいますのも、Google検索しても腕時計への名入れは刻印ばかりで、プリントでの名入れがなかったからです。
まず大変だったのは位置合わせです。
当社ではUVプリンターという機械で名入れしますが、印刷データとUVプリンターで名入れする位置を正確に合わせる必要があります。
\UVプリントについて知りたい場合はこちらをご覧ください/
印刷するデータ自体がきちんと作り込まれていても、印刷エリアが正確でなければ、全然違う場所に名入れされるからです。
印刷エリアが少しでもズレると、こうなります。
このようなリスクがありますので、いきなり腕時計に印刷はしません。
まずは印刷される箇所にテープを貼り付け何度も印刷をトライし、問題ないことの確認ができた後で腕時計本体に印刷します。
位置合わせだけではありません。
UVインクの定着を向上させるために素材への表面処置も実施します。
素材にそのままUVプリントで名入れを施しても、剥がれるリスクがあります。
そのリスクを可能な限り下げるべく、素材表面にUVプリント定着を向上させるための処置を実施するのです。
処置終了後に位置合わせした場所に腕時計を配置した上で、UVプリントを実施。
最後に名入れ箇所をさらに定着させるための後処理を実施し、ようやく完成です。
文章にすると合計3工程とシンプルですが、半日以上時間を要しました。
大変な作業でしたが、時計という商品やステンレスへの名入れ実績を作ることができましたので、ノウハウ蓄積により仕事の幅を広げられたよい機会ともいえます。
当然できない仕事もあるため、難易度が高そうだからどんな仕事でも受ければいいということではありません。
依頼を受けるということは、お客様が期待することにも繋がります。
期待通りの結果を出せれば問題ありませんが、上手くいかなかった場合はお客様の期待を裏切ることになりますので、慎重な見極めが必要です。
とはいえ、経験がないからといって全てを拒否してしまうと、自分たちの成長も限られてしまいます。
だからこそ、現実的に対応可能なのか、そうでないのかを見極めが重要です。
難易度が高くとも、対応可能だと判断できれば挑戦します。
そう捉えることで仕事の幅を広げられますし、なによりお客様への新たな価値提供に繋がると考えます。
今回のご依頼を通して、仕事の難易度やリスクについて考える機会がありましたので、まとめてみました。